作品のテーマ

映画が完成した段階で、私(上田)が中村さんに

「ところでこの映画のテーマってなんですかねえ」

とお聞きしたところ、

「はて?なんだろう…」

となりました。監督である二人とも…。

あれこれ話しているうちに二人が達した結論は、「運命の採択・決定」ということでした。もっと短く書くと「運命の受容」といったところでしょうか。

実は映画の企画出発点が

「『椅子取りゲームのエチュード』を映像したら面白いね」

という単純なものだったので、二人とも映画のテーマについては最初は全く意識していなかったのですが、完成した映画を見てみると、この「運命の受容」という表現が一番しっくりくるような気がするのです。

もしかするとそれは、中村さんの持っている人生観、哲学の中に、「生きるということは運命を受け入れること」という筋のようなものが一本あって、それが劇団「天辺塔」の活動の中に色濃く反映されているのではないかと思うのです(中村さんがそれを意識されているかはわかりませんが…)。

それゆえ、映画の中に「運命の受容」というテーマを見出すのではないかと個人的に感じました。

計らずもそれは、私が最初に小学校を訪れたときに見た、「自分の生まれた場所で最後まで生きぬく人々の姿」にも通じると思うのです。